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―――きっとまた・・・木苺摘もうね・・・ 『木苺』 ブツブツと、人の話す声が聞こえてくる。 テーブルの上に置かれた、低めの円柱のような形をした物の前で、 額に汗を光らせ、一心不乱に何か作業をしている女性の姿があったが、 その女性の声にしては、低すぎる。 よく目と耳を凝らしてみると、 話し声の正体は、円柱のような形をしたものから発せられているのだと、 ハッキリと分かった。 「気持ち悪い・・・。」 作業をしている女性とその円柱のような形のものを 交互に見つめながら、少女はポツリ、と呟いた。 長い廊下の突き当たりの部屋。 そこが、その少女の居る場所だった。 もちろん、中には入らず、ドアの開いた隙間から見ていたため、 中の女性には気付かれていないハズ、だった。 「・・・そこで何をしているの？パンジャ。」 「え？」 ふいに、声をかけられ、パンジャ、と呼ばれた 少女は曲がっていた背筋を伸ばし驚きを露にした。 動いた際に、黒く、長い髪の毛が揺れる。 長めの前髪が目にかかったのを直しつつ、 パンジャは黙々と作業をしている女性に答えた。 「リオ先生、ずっと禁書を解くのにかかりっきりだから、お茶でも・・・と思って。」 リオ、と呼ばれたその女性はふと顔を上げ、 パンジャの顔を見るとふわっとした笑顔を彼女に向ける。 「あら。ありがとう。是非、頂くわ。丁度休憩しようと思っていたの。」 「本当ですか？じゃあ、準備してきますね！」 リオの笑顔に答えるように、無邪気な笑顔を見せながら パンジャはお茶の準備をしに長い廊下をパタパタと走って行く。 「ふぅ。パンジャが来るまでにもう少し・・・。」 パンジャが走り去ったのを確認すると、リオはまた視線を禁書に落とし、 解読の作業の手を進めた。 パンジャを見ていると、思い出す―。 今頃、どこでどうしているんだろう。 ビコ――― 『お師匠様！出来ました！』 『うん、偉い！これでビコも一人前の魔具師ね！』 『う・・・うぅ・・・お師匠様ぁぁぁ！！！』 ビコが皆伝し、一人前の魔具師になった日の事。 まるで、自分の妹のように・・・子供のように心から嬉しかった。 巣立っていくのは寂しいけれど。 ビコならきっと立派な魔具師になれる。 そう思い、時に厳しく、時に優しく指導してきた。 家族同然のビコと、今は共に肩を並べるのではなく、 向き合い戦う立場になってしまった。 けれども、愛弟子を前にしても、リオには曲げる事の出来ない思いがあった。 その為には犠牲にしなければならない事もある・・・。 闇は深すぎ、その先にある光には気付く事が出来なかった。 気付けなかったのだ・・・。 そんな自分に、もう、ビコの師匠と名乗れる資格など、ない。 ポタッと何かが禁書の横に落ちた。 「あ・・・。久しぶりね、こんな気持ちになるのは・・・。」 笑顔を作ってみようとするが、 気持ちの高ぶっていたリオにはどうする事も出来なかった。 どう頑張っても、いくら拭っても、瞳から零れる雫は拭いきれず、 ポタポタとテーブルの上に落ち、染み込んでいく。 魔監獄からこの場所へ戻ってくる前に ビコからかけられた言葉が蘇る。 『また一緒に、木苺摘もうね・・・！』 脳裏に焼き付いて、消えてはくれなかった。 自分は、ビコを傷付けようとさえした。 それなのにも関わらず、ビコは自分の身の安否を心配し、 そして、必ず戻ってきてくれる、と信じているのだ。 「ごめん・・・ごめんね、ビコ・・・。」 頚を垂れ、泣きじゃくる事しか出来ないリオ。 それを、ドアの外からそっと見守るパンジャの姿が見える。 「あ・・・ら。パンジャ。早かったのね。じゃぁ、休憩しましょうか。」 急いで涙を拭い、リオはパンジャを見た。 「リオ・・・先生。悲しい時は、泣いていいのよ？」 遠慮しがちに微笑み、パンジャは部屋の中へ入ってくると お茶の入ったティーカップをリオの前に差し出した。 「えぇ・・・ありがとう。でも、大丈夫だから。」 ニコリと微笑み、お茶を一口飲むと、リオはパンジャに切り出した。 「ねぇ、パンジャ。パンジャはロージー君のドコが好きなの？」 「え？ロージー君の？？あのね・・・。」 嬉しそうに話をするパンジャを、 まるでビコを見るような優しい眼差しで見つめるリオ。 パンジャに、ビコの姿を重ね 寂しさを紛らわしているかのようだった・・・。 *****あとがきという名の言い訳***** 本編では全く絡む事のなかった二人ですが・・・。 一応、同じ箱舟のメンバーですからねぇ。 絡んでみてもいいんじゃないか、と思って こんな駄作を作ってみました(笑)。 と、いうか、内容のない文章でごめんなさい・・・。 ここまで読んで頂き、ありがとうございましたm(__)m 戻
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