円サマの一日<It is Tiki to write.>
〜morning〜


ふと、窓を開ける。
気持ちの良い風が、見に纏っている衣服をなでるように
ティキの横を通り抜ける。
外では静かに上り始める太陽にまるで答えているかのように
小鳥たちの心地良いハーモニーが重なる。
辺りを穏やかな光で包み込み、その眩い光は
この地に”今日”が来た事を伝えようとしていた。

新鮮な光に射され、草花たちは思い思いに花弁を広げ陽を浴びようとするもの、
陽の射している方へ向き光合成を誰よりも早く始めようとするものたちで
犇めき合っていた。

すぐ横を流れる小川も、休むことなく自然のままに母なる海へと続く道を
一遍の迷いもなく、同じスピードで足を進めていた。
陽の光が反射し、水面は宝石を散りばめたように眩しく、美しく見える。

ふと、2階で人の動く音に気付き、小さく呟いた。



「もうスグ、マドカ様が起きて来る。」


窓辺から緩やかにながれる小川を眺め、その眩しさに
仮面の奥の目を時折細くしながらも、家の中でエンチューの立てる
ほんの些細な音にも常に神経を集中させている。
トントントン・・・と自室を出て階段を降りてくる足音がティキの耳に届く。
足音はリビングの中央に置かれたテーブルの前で止まる。
と、代わりにイスの引かれる音が響く。



「朝食の準備ダ。」



キッチンへ行き、あらかじめ容易しておいたクロワッサンの入ったバスケットを手に取り、
ティーポットとティーカップを持ちエンチューの座っているテーブルまで運ぶ。


この家は極端に物がない。
およそ20畳分の広さのあるこのリビングにある物は、
今エンチューの座っているイスと、ティキがクロワッサンなどを置いた、
このテーブルの2つのみである。
もっとも、エンチューに言わせてみればこの2つですら、
あまり必要ではないらしいが・・・。



「ありがとう。でも、僕 食べなくても平気だよ。」

一度クロワッサンに視線を落としたものの、すぐにティキを見上げ、
少し微笑みながらエンチューは口を開いた。
その左頬から頚筋にかけて、うっすらと反逆者の証である傷が浮かび上がっている。
その傷を見る度、ティキは込み上げてくる感情を抑えるのに必死だった。



”あと少しダ。”



あと少しで800年という気が遠くなるほどの年月をかけて
一歩ずつ、確実に近付いてきている夢を
この手に掴み取れるのだ。
嬉しさのあまり、口元が緩む。
当然、仮面の下のため、エンチューは気付くハズもない。



「ティキ?」

「分かりましタ、円サマ。食べなくても良くナルとは・・・イイ事デスネ。」

「・・・うん。すごくいい気分だよ。」


晴れやかな笑顔を浮かべるエンチュー。
彼は、まだ何も知らない。
これから先、彼の身に起こる事・・・。
隠された本当の真実に辿り着くという事・・・。

そして。
それはティキにも言える事。
まさか、自分の身に降りかかる事を予知するなんて、
全くなかった事で・・・。




テーブルの上に置いたクロワッサンやティーポットを持ち、
ティキはキッチンへと戻る。
捨ててしまうのは勿体無いため、
ラップでくるみ、食器棚へとクロワッサンを戻る。
もちろん、エンチューには内緒のため
見られないよう、最新の注意を払って・・・。
明日のために、取っておくのだ。



「もう一日くらイ・・・。」


そうつぶやいた声は蚊の羽音よりも小さく、
離れた場所に居たエンチューには当然ながら
聞こえる事はなかった。












*****あとがきという名の言い訳*****

ティキ目線で円様の一日を。
企画しましたが、朝しか書けません(ぇ)

気力があったら(てか絶対やれよ)
昼・夜も書きます。


と、いうかこれ、とある場面を書いてみたんですが・・・
即座にピン!ときた方は相当なムヒョマニアですよ(笑)


こんな駄文をここまで読んで下さって、
どうもありがとうございました!










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