―Stroll―



初秋の風が、心地良かった。





「円サマ。少シ出掛けてキまス。」




先日のリベンジ、と言わんばかりによく晴れた昼下がり、
ミックと夕食後のアイスクリームを賭けて鬼ごっこをしているエンチューに
一言告げ、ティキは部屋に入るとキッチンへ行き、水道の蛇口に顔を近づけた。




と、次の瞬間、ジュルン。と音を立てて、
ティキの顔が蛇口に吸い込まれ、
ティキは狭い狭い水道管の中を、自分の大きさを自由自在に操り、
流れに身を任せてどこに辿り着くのか、少し想像をしながら
鼻歌混じりに所謂彼なりの散歩を楽しんで居た。











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着いた場所は、公園の水呑場だった。
いきなりズルッと出てきたティキに驚いた子供が、
目玉が零れ落ちそうなくらいに目を見開き、硬直していた。



「ほォ。今日は公園・・・カ。」



先日は、皇居にある公園の池の中に出てしまい、
見つけた警備員に捕まりそうになり、ついついその警備員を握りつぶしてしまったばかりだった。



目の前に見る子供は、声をあげる訳でもなく、
ただただ怯えているだけだった。



『殺リたイ・・・』


そうは思ったが、ふと公園の外に屋台が並んでいるのが見え、
興味が沸きその子供は放っておいて、
その屋台を見に、フワリと浮いたまま公園を出て行く。




「う・・・浮いてる・・・」


ポツリと子供が呟いたが、公園の外で盛大に盛り上がっている祭りの音に掻き消され、
ティキの耳までは届かなかった。








「何何ー?!そのお面っ!どこに売ってんのー?!」



屋台を見て回ろう、とした時だった。
女子高生っぽい娘たちが、ティキの仮面を物珍しそうに近寄ってきた。




「五月蝿イ。これハ売り物デはないゾ。」
「キャハハ。ウケるんですけどー。」




女子高生たちを必死で追い払おうとした仕草が、
どうやら彼女たちのツボにはまってしまったらしく、大声で笑い始める。




『ドうシテそんなニ笑う事ガある。』



何が原因で笑われているのか分からないティキは、
取り敢えずその場を離れようと彼女たちを無視して、
人込みの中に混ざろうとフワフワと浮きながら行き交う人々の中に入り込む。




「あー。逃げちゃったよー。」
「居たー!!!ちょっとー。探したじゃないのさ。」
「ナナ。あんた1人で写真撮ってばっかでつまんないんだもん。」
「そ・・・だって・・・。それよりっ!逃げたって、誰が?」
「ん。何か、変なお面付けてたんだ。更に、真っ黒な服着て。」
「へぇ・・・こんだけ賑やかなら、居るよね、そういう変な人の1人や2人。」
「ま、ね。じゃ。はぐれたナナちゃんに何かおごってもらおー!」
「えぇ〜?!何でそうなるのよ〜!!!」








一方のティキは、といえば・・・。
夕食をここで買って行ってしまおう、と考え
焼きそばにしようか、お好み焼きにしようか、はたまたたこ焼きにしようか、
とずっと屋台の前に立ち悩んで居た。
たこ焼きだと多少量が少なめだから、食べた気にはなれないかもしれない。
お好み焼きはエンチューの好みではないかもしれない(軽く親父ギャグ)
焼きそばは、急いで食べようとした時に麺が引っかかる。



「うーム。ドうしよウかな。」
「お兄ちゃん、うちのお好み焼きは、天下一品だよ!」
「いやいや。うちのたこ焼きだって!!!」
「やっぱ男は黙って焼きそば食ってるのがかっこいいぜ!」



屋台が3軒連なっているため、
その真ん中に立って迷っているティキを見て、
それぞれの店の店主が少しでも売り上げを伸ばしたい、と 声を掛ける。





「よシ。一つずつ、買ッテ帰ろう。」



悩んだ挙句、ティキは3種類とも買って帰る、という選択肢を取った。
代金を支払い、品物を受け取ると
魔法陣を取り出し、そそくさと家路へ着くのだった。









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「たダ今帰りマシた。」
「お帰りー、ティキ。晩御飯は何ー??」
「たこ焼き、お好み焼き、焼きそば・・・どレがイイですカ?」
「うーん・・・じゃあ、たこ焼きがいいな。」
「畏まリましタ。」





テーブルの上にたこ焼きを置くと、
お茶の準備をしにキッチンへと入っていく。
そして、毎度毎度、お馴染の事・・・。



「明日ノ朝ト昼ノ分・・・。クスクスクス・・・。」



食器棚の中へ、上手い具合に焼きそばをお好み焼きを隠すと、
暖かいお茶を急須へ作り、
エンチューの元へと運んでいく。






「いい加減気付いてる事に気付いてくれないかなぁ・・・。」




エンチューの嘆きは、月夜へと消えていった。



















*****あとがきという名の言い訳*****
久々に更新がこれって・・・。
どうよ?(知らね)

お散歩、させてみました。
ティキに。
ナナちゃんは、友情出演です。
女子高生と絡んだらどうなるんだろう?!
・・・そこにナナちゃんが居たら・・・?!
とかってふと思って。
でも、直接会ってないっすね、この2人。
まぁ、そんな日もあります(笑)。














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